洗脳とカルト宗教はよく連想されやすいトピックです。
特に宗教を信仰していない人からすると、中身の見えない宗教組織・教団というものは何をやっているのかわかりません。
「人をだましているのではないか?」
「洗脳して教祖の思い通りにコントロールしているのではないか?」
「マインドコントロールしているのではないか?」
このように実態の見えないものには少なからず疑いの念と不気味さを感じるでしょう。
今回はカルト宗教と洗脳の関係について紹介します。
洗脳とマインドコントロールの違い
おっと、その前に洗脳とマインドコントロールの違いについて触れてませんでしたね?
厳密にはニュアンスの違いかも知れませんがザックリいうとこういうことです。
- 洗脳:肉体的苦痛(虐待・拷問・不眠)、薬物投与、電気ショックなど、暴力的手段を用いて相手の心を支配すること
- マインドコントロール:心の隙や弱い部分に入り込み、情に訴えるような巧みな言葉で相手の心を変えるよう導くこと
洗脳になると違法性を匂わす行為になってきます。
マインドコントロールはテレビや新聞などの情報操作も一種のマインドコントロールです。
そのため普段わたしたちはいくつかのマインドコントロールと隣り合わせで生活していることになります。
それを善というか悪というかは人それぞれの解釈です。
洗脳とマインドコントロールで共通していることは「本人の意思を個人または組織や宗教の教義・主張・思想に変える」ということでしょう。
洗脳とマインドコントロールはどっちが解くのが難しい?
洗脳を解くのとマインドコントロールを解くのとでは洗脳の方がまだカンタンだともいわれています。
洗脳は本人の意志に反して力づくで思考を変えていることもあり、その効力はそれほど長続きしません。
そのため洗脳は1回で終わることは少なく、継続して洗脳を続ける必要があります。
しかしマインドコントロールとなると話は別。
他人の思想や教義を自分の思考や心理に落としこむことになるので、宗教に限らず、
など、あらゆる場面で気づかない内にマインドコントロールされていることも考えられます。
人間一度「正しい!」と思ったものをカンタンに変えることはできません。
洗脳と違ってマインドコントロールが完了したあとは自分で教義に沿った行動をしてくれます。
マインドコントロールの恐ろしいところは、自分でマインドコントロールされているという実感がないこと。
だからこそマインドコントロールを解くのは難しくなります。
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カルト教団は「洗脳」「マインドコントロール」しているのか?
まず宗教の中に30年間いたわたしの見解では、
“意図”して洗脳・マインドコントロールしている宗教はそれほど多くはない
というものです。中には明らかに洗脳している宗教もあると思いますが、ごく一握りではないでしょうか?
ここで強調しておきたいのは
- “意図して”マインドコントロールはしていない
- しかし“結果的に”マインドコントロールに近いことをしている
という点です。
カルト宗教は自分がマインドコントロールしているとは思っていない
カルト教団が“意図してマインドコントロールしていない”というと疑われるかもしれませんが、これは本当です。
自分たちが洗脳やマインドコントロールをしているとは本気で思っていません。
なんだったら「お前はマインドコントロールしているだろう!」と言ってくる人に対して鼻で笑うほどです。
「いやそんなことするわけねえしw」
とか思っています。
信者としては、
- 自分たちが信じている宗教の教義がどれだけ素晴らしいか
- その教義があなたの人生をどれだけ良いものにするか
を熱く語っているだけで、相手を自分の欲望のために服従させようなんて思っていないんです。
勧誘から伝道、入信まで一連の流れは、相手を救うために必要なプロセスだと思っています。
だから洗脳とかマインドコントロールみたいなネガティブな単語は意味合いとして当てはまらないと考えているのです。
そしてもちろん洗脳のような
で無理やり伝道するようなことはしません。
それを伝道というかも疑問ですが…。
また、マインドコントロールのように
などを狙って思考を変えてやろうとも思っていないでしょう。
結果的にはマインドコントロールに近いことをしている
ただ伝道のプロセスを分析してみると、やはりマインドコントロールに近い流れというものは少なからずあります。
難しいのは宗教団体側や伝道を担当する信者がそのプロセスをマインドコントロールだと“思っていないこと”です。
これがもしも本当に意図して「洗脳してやろう」とするのなら、にじみ出る悪意から多少の警戒はできるでしょう。
しかし実際はというと、
- マインドコントロールしていると思っていない
- 自分たちの信じる教義が素晴らしい真理だと本気で思っている
- そして本気で相手の助けになると信じて接する
など、悪気など一切ないんです。
そのため声をかけられた人も
「あ、この人は本気でわたしのことを思ってくれている」
「悪い人には見えない」(実際に“露骨に悪い人”というのは少ないです)
と思ってしまいます。
特に自分のことを本気で考えてくれる人には感動を覚えるものです。
相手をだまそうと思わずにマインドコントロールに近いことをしている、しかも迷いなく…。
無自覚ほど怖いものはありませんね。
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カルト教団が洗脳・マインドコントロールする方法
ここまで無自覚ながらもカルト教団がマインドコントロールをしていることを紹介しました。
注※もちろんすべての宗教がそうだという意味ではありません!
そこで気になるのは、
- どうやってマインドコントロールをしているのか
- どうやって人はカルト教団の信者になるのか
ということです。
大体は洗脳とマインドコントロールの中間くらいのやり方
カルト教団が人を伝道する方法は洗脳とマインドコントロールの中間くらいのやり方です。
洗脳とマインドコントロールについて思い出してください。
- 洗脳:肉体的苦痛(虐待・拷問)、薬物投与、電気ショックなど、暴力的手段を用いて相手の心を支配すること
- マインドコントロール:心の隙や弱い部分に入り込み、情に訴えるような巧みな言葉で相手の心を変えるよう導くこと
言い換えれば、
- 洗脳は身体・肉体にアプローチする
- マインドコントロールは心理・精神にアプローチする
という見方もできます。
カルト教団の勧誘の仕方はこの中間なので、
- 強烈な肉体的苦痛は与えない程度に洗脳
- 露骨な意識操作はしない程度にマインドコントロール
というように、洗脳とマインドコントロールの要素を含んだものになりやすいです。
カルト教団によくある勧誘(伝道)プロセスの例
では具体的にカルト教団はどのようなプロセスで伝道するのか、代表的な流れを紹介します。
- 接点を持つ
- 交流・イベント勧誘
- セミナー勧誘
- 宗教だと明かす。入信を促す
- 教育する
もちろんこれがすべてではありません。
伝道する相手に合わせてプロセスを柔軟に変える団体もあれば、最初から宗教だと明かして接点を持つケースもあります。
あくまで1つの代表例として参考(参考?)にしてください。
①接点を持つ
接点を持つ方法は多岐にわたるので“これ”というものはありません。
以下にざっと並べてみます。
- 職場の同僚・上司・部下(元上司とかでもある)
- 学校の友達
- 教室の生徒(教室自体が宗教運営ってことある)
- 街頭アンケート(駅前とかが多い)
- 占い(最近減ったかな?手相が一時期流行った)
- ボランティア活動(鉄板)
- 自宅訪問(日常的にある)
- 自己啓発セミナー(実は…というパターン)
- ダイレクトメール(〇〇さんのお友達みたいに)
- 物品購入(壺とかまだやってる?)
- その他イベント
要は接点が持てればこの際なんでもいいということです。
最近ではSNSも普及しているのでインターネットを活用したものもでてきています。
②交流・イベント勧誘
一度接点を持てたらしばらくは交流することで相手との距離を縮めていきます。
積極的に交流の場を持つために教団が企画したイベントへ誘うことも珍しくありません。
- ボランティア活動
- 音楽ライブ
- クリスマスパーティ
- スポーツ大会
このようなイベントは交流する機会としてうってつけです。
わたしがいた宗教では「登山」というものがありました。
洗脳ほど強く肉体的な苦痛はありませんが、登山となるとそれなりに疲れますよね?
登頂した達成感と心地よい疲労感があるときの会話は軽い高揚感を生み出して、深い話ができるようになるんです。
また一緒に困難を克服したことで強い仲間意識のようなものが生まれるので、ぐっと距離が縮まるイベントの1つでした。
③セミナー勧誘
ある程度交流ができると今度は啓発セミナーに誘います。
どこかの外界から隔離された施設に泊まってセミナーをするケースがほとんど。
最初はイベントとセミナーの境目がわかりにくい程度の内容で、一泊二日または二泊三日くらいのものに誘います。
施設は自然が広がる美しい場所が定番です。
初期のセミナーには、
- スポーツ
- ゲーム大会
- 教義に少し触れた面白めのレクチャー
- キャンドルサービス
- チャレンジイベント(少し自分の精神的限界を超える体験をさせる)
のようなものが企画されていて、大体終わるころには
「よかった!」
「感動した!」
「また参加したい!」
という感想をもらえます。
(あ、これのサクラ何度かやりました笑)
するとセミナーで感動した体験があるので交流はさらに活発になっていきます。
このようなセミナーを何度かくり返しながら、少しずつ教義に共感してもらおうとするんです。
セミナーが進むにつれて内容も濃くなっていきます。
ネットで口コミなんかを見ていると、セミナーの期間を長くしていく宗教もあるようです。
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④宗教だと明かす。入信を促す
どのタイミングで宗教だと明かすかはある程度基準が決まっていて、大体は一連の流れを取り仕切る幹部が面談します。
ここで面談するのは当ブログで紹介しているリーダータイプが多いです。
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ここで最終的な判断を本人に決めさせます。
ただしどこまでが本人の意志で、どこまでがセミナーの影響かは微妙なところです。
セミナーで高揚感があるタイミングで面談して、その場の雰囲気でイエスと答えることも少なくありません。
⑤教育する
入信を決意した人には、その宗教独自のカリキュラムに沿って教育されます。
教育期間中にも感動体験をたくさん盛り込んで、どんどん宗教の教義に引き込んでいきます。
そして一連の流れの中に洗脳・マインドコントロールの要素がちりばめられていることが多いです。
よくあるのが、
- 登山
- 長距離ランニング
- 有酸素運動
- 徹夜で祈祷
- 飛び込みセールス
という肉体的・精神的に疲れるタイミングで教義について語るケース。
- 肉体的苦痛・心地いい疲労感(洗脳に必要な要素)
- 精神的苦痛・感動(マインドコントロールに必要な要素)
この2種類のどちらか、もしくは両方同時に与えてから教義を語ると、内容を受け入れやすくなります。
最後に
伝道プロセスの一例を紹介しましたが、ここまで読んでいただいた方はこう思ったに違いありません。
「いや、がっつり洗脳しにかかってるじゃん!」
それでもカルト教団は自分たちが洗脳・マインドコントロールしているとは思っていません。
誰が始めたかもわからないくらいずっと前からこのような方法で伝道してきて、なんだったら伝道する側も同じような方法で伝道されてきたんです。
ただ意図してマインドコントロールしているのではなく「伝道するために試行錯誤した結果、マインドコントロールや洗脳に近いカタチになってしまった」というのが実際です。
30年間宗教に身を置いていた経験から、このような方法で伝道されてきた人はあとあと面倒な信者になりやすいです。
口ではいいませんが潜在的に「自分の思考を変えられた」という被害者意識があるのでしょう、自分の人生の責任を自分以外の
などに転嫁(てんか)している人を数多く見ました。
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