一九九五年3月。日本中が“あるカルト教団”の狂気に震撼しました。
そうオウム真理教(当時)が起こした「地下鉄サリン事件」です。
- 死亡者13人
- 負傷者約6300人
通勤ラッシュで人が多い時間を狙った犯行でした。
新興宗教に対して警戒する人は、必ずと言っていいほどこのオウム真理教が起こしたテロ事件が頭をよぎるでしょう。
それまでにも日本国内で宗教が起こした事件はありました。しかしその多くは金銭的な詐欺が多く、オウム真理教のように
- テロ活動
- 軍事武装
- 計画的殺害
ということはありませんでした。しかし1つの新興宗教が実際に集団でテロを起こしたのです。
今回は本来、人を癒し、救い、希望を持たせるはずの宗教が「狂気に走る日」とはいつなのかについて考えました。
宗教が人を殺す?
オウム真理教の事件以降、
「宗教が人を殺す」
「宗教が武装する」
「宗教がテロを起こす」
という可能性があることに気づき始めました。
世界的にみるとイスラム諸国などで過激派がらみの内紛などが度々起こっているので、実は珍しいことではありません
しかし日本人の宗教観は殺生を良しとしない、
- 神道
- 仏教
がベースとなっていることもあり、まさか宗教が殺人を犯すとは思いません。
それがオウム真理教が起こした一連の事件で、それまでの日本人が抱いていた「宗教は人を殺さない」という常識が変わりました。
そう「宗教は人を殺すこともある」ということに。
もう1つの国内発のテロ集団「日本赤軍」
日本で大規模なテロを起こした組織はオウム真理教以外にもう1つありました。
日本赤軍です。
彼らはマルクス・レーニン主義思想をベースに革命を起こすため、日本国内だけでなく、
- テルアビブ空港乱射事件
- ドバイ日航機ハイジャック事件
- シンガポール事件
- 在クウェート日本大使館占拠事件
- ハーグ事件
- クアラルンプール事件
- ダッカ日航機ハイジャック事件
など世界各地で大規模なテロ活動を行っていて、現在も主犯格数名が逃亡中です。
度々テレビでも特集されるので、この頃まだ生まれていない人でも名前くらいは知っていることでしょう。
日本赤軍と重なるカルト教団の姿
日本赤軍自体は「共産主義」「マルクス主義」という思想を信奉しているのであって、神仏を信仰するような宗教ではありません。
しかしそのカタチはやはりカルト教団そのものです。
カルト教団は
- 教祖の教え
- 教団の方向性・目標
に沿って宗教活動をしています。
日本赤軍はどうかというと、
- 共産主義思想
- 思想から導き出された「革命」という目標
に沿って大規模なテロ活動をしていました。似ていませんか?
教祖の教えも言い方を変えれば思想です。カメラを引いて全体の図式を見てみると類似点が非常に多いことがわかります。
日本赤軍とオウム真理教の共通点
断っておきたいのは類似点が多いからと言って、すべてのカルト教団がテロを起こすとまでは言っていません。
オウム真理教はかなり過激な思想と目標を持っていたために、宗教でありながら武装をしました。だからといって他の宗教もそうだろうということにはなりません。
日本赤軍とオウム真理教の共通点はいくつかあげることができますが、大きく分けると3つあります。
- 偏った思想に陶酔していたこと
- 社会から隔離されていたこと
- 幹部に社会的エリートがいたこと
この3つの共通点がどうやって彼らを狂気に走らせることにつながるのでしょうか?
1.偏った思想に陶酔していた
1つの思想や教義に偏ると、そこから外れるものに対して排他的になりやすくなります。
すると思考が制限されて偏った判断しかできなくなるんです。
分かりやすいもので言えば、どこの国でもある右翼と左翼。片方の思想がもう片方の思想を反対していつまでも収拾がつきませんよね?
- オウム真理教の信者
- 日本赤軍のメンバー
にもやはり偏った思想があり、その思想を疑わないほどに陶酔していました。
偏った思想は偏った思考を生み出してしまい、最終的には偏った善悪観で世界を批判しだします。
オウム真理教の場合
オウム真理教の信者たちは、
- 教祖
- 教義
に陶酔していました。「教祖が日本の王になる」と本気で信じていたのです。
日本赤軍の場合
日本赤軍も
- マルクス主義という思想
- 革命という目標
に陶酔していて、それを疑うことをしませんでした。
2.社会から隔離されていた
人はあまりにも偏った思想や教義をカンタンに受け入れません。
しかしいくつか条件を満たすとまさかと思うような思想でも受け入れてしまう可能性があります。
- 他の情報をシャットアウトすること
- 社会から隔離した環境で思想教育すること
他にもいろいろありますが、とにかく社会から隔離して余計な情報を与えない環境に置かれると人は比較するものがなくなり判断力が著しく低下します。
そのタイミングで宗教の教義や思想を吹き込まれると「あ、そうなのかな?」と思ってしまうんです(経験あり)。
オウム真理教の場合
オウム真理教は特に徹底して隔離が行われていて、
- 独房に閉じ込め監禁する
- 信者同士の情報交換を制限する
- 密告制度をつくる
- 出家させる
- 一日中教祖の説法テープを聞かせる
など情報をシャットアウトしながら信者に教義を吹き込んでいました。
日本赤軍の場合
日本赤軍のような新左翼は人がほとんど踏み入らない山岳地帯のような場所で、
- 軍事訓練
- 思想教育
- 総括と呼ばれるメンバー同士の批判や自己批判
- リンチ・暴力
といったことが頻繁に行われていました。
過激化して仲間同士で殺しあう事件も発生。日本国内でですよ?
3.幹部に社会的エリートがいた
頭の良い人は物事をうまくカテゴリーごとに分けることができます。
- あいうえお→あ行
- かきくけこ→か行
このように大枠でとらえることでうまく情報を整理して、学習能力を向上させるのです(まあ、わたしもカテゴリーわけが得意なのですが?ドヤ)。
しかし、ものごとには良い面と悪い面があり、カテゴリーごとにわけていくとどんどん考え方が単純化していきます。
例えば、
- 本来「あ行」は「あいうえお」のカテゴリーなのに
「あ」だけで考えるようになる - 本来「か行」は「かきくけこ」のカテゴリーなのに
「か」だけで考えるようになる
というように、ものごとを極端にとらえてしまう可能性があるんです。
特に良い大学を卒業するようないわゆる社会的エリートは顕著で、カテゴリーの外側に対しては無関心か、もしくは徹底した制裁を加えることがあります。
もちろんすべての人がそうではありませんが、テロ組織の幹部にはやはりエリートが多くなる傾向があります。
オウム真理教の場合
オウム真理教の幹部には、
- 慶応義塾大学医学部
- 東京大学物理学部
- 早稲田大学理工学部
- 北海道大学
など、とにかく名門国立大学出身の人が多く在籍していました。
また教祖は東京大学へ入学はできなかったものの、3度受験するほどのエリート思考だったようです。
日本赤軍の場合
日本赤軍の幹部には、
- 明治大学
- 京都大学
- 慶応義塾大学
など、オウム真理教同様に名門国立大学出身者が多く在籍していました。
カルト教団が狂気に走る日
現代あるカルト教団が今後オウム真理教や日本赤軍のように、
- 武装
- 殺人
- テロ活動
などに手を染めることは実際にあるのでしょうか?
過激カルト教団にとっての脅威「インターネット」
現代はインターネットがかなり普及したこともあり、他からの情報を完全にシャットアウトすることは困難です。
特に今はわざわざパソコンの前に座らなくても、スマホを片手にすぐインターネットにアクセスできます。気になったらググるまでがメチャクチャ早いですよね?
自分たちの思想や教義を人に根付かせるには、
- 社会から隔離された環境
- 他からの情報をシャットアウト
する必要があります。
しかしそれが難しくなった今、過激な思想を持つカルト教団は衰退していくことになるでしょう。
スマホを取り上げる?
実際、わたしが所属していた宗教にも、伝道してきてセミナーに参加させるときは、
- 人がほとんどいない山の施設
- セミナー中はスマホや携帯をスタッフに預ける
という対策をしていました。
ネットには宗教の悪口がいっぱい書かれています。セミナー中にそんなものを見られたら一気に警戒されるでしょう。
一応そうやって対策しているカルト教団がいまだにあるということです。
テロの可能性は否定できない
2015年9月29日にこんなニュースがあります。
過激派「中核派」の活動家の男2人が、東京都江戸川区の拠点「前進社」でメンバーの男性を監禁して屋上から転落させたとして警視庁に逮捕された。2人は黙秘しているという。
(略)
毎日新聞によると逮捕容疑は5月3日夜から5日間にわたり、同派元活動家の20代男性を前進社内の会議室に監禁し、結果的に5階の屋上から転落させた疑いがある。男性は屋上の雨どいを伝って逃げようとしたが足を踏み外して転落。その様子を警戒中の警察官が目撃していた。男性は頭などを打ち、一時意識不明の重体となっていた。
男性は監禁中、中核派内の情報を警察やマスコミに漏らした疑いがあるとして自己批判を迫られていたという。警視庁では、組織内で「総括」と称した暴行が行われていたとみて調べている。
引用元:Huffpost
2015年でインターネットが普及した現代でもこんなことをやる人はやるんです。
その場に警戒中の警察官がいたということは、わたしたちの知らない水面下で警察と革命を目指す人たちがバチバチやっているということです。
もしかしたらあなたが気づいていないだけで、すぐ近所で
- 過激なカルト教団
- 過激な思想集団
がテロの準備を進めているかもしれません…。
最後に
今回このような記事を書いたのには理由があります。
宗教をやめようと思うよりもずっと前、母と「信仰」というものについて話し合ったことがありました。
すると母は驚くことを口にしたのです。
「わたしは一生をこの宗教に捧げてきた」
「〇〇さまのためなら死ぬ覚悟ができている」
「それがわたしの信仰!」
その語り口調や表情が2000年11月に逮捕された、日本赤軍のリーダー重信房子さんが逮捕された映像と重なったのです(たまたまYoutubeで見てたんですけど)。
重信房子さんは罵倒する報道陣を前に笑顔で「残念だけど頑張るから!」と言っていました。
その時の顔…。
教義に酔って我を忘れる母と似ていて、どうにも悲しくなったんです。
1つの思想や教義に染まることなく、軽いフットワークで人生を楽しみたいものですね?