図1:新興宗教信者4つのタイプ
上の図1は新興宗教の中にいる人たちを大きく4つのエリアにわけたものです。
わたしの経験上、信者はこのエリアのどこかに位置しています。
一応線で区切ってはいますが、明確に分かれているわけでもありません。
もっと言えば信者はそれぞれこの4つの要素を持ち合わせているけど、割合偏っているエリアがあるということです。
この4つのエリアではそれぞれ中心的な考え方や態度があり、そのエリアに偏る人たちを4つのタイプにわけました。
- 信仰重視タイプ
- 実力重視タイプ
- リーダータイプ
- 傍観者タイプ
基本的にその人のタイプから対照的な位置にあるタイプの人とは対立しやすく、接点のあるタイプの人とは当たり障りないか、良好な関係を築きやすくなります。
第3回は傍観者タイプについて解説していきます。
傍観者タイプの特徴と本質
傍観者タイプの行動原則は、
- 自分が楽しいか楽しくないか
- やりたいかやりたくないか
というはたから見ると気まぐれで身勝手なものです。
しかし、宗教組織に対して危害を加えるようなことはほとんどなく、信者の頭数(実際傍観者タイプは多い)として教団に在籍しているケースが多くなります。
特徴~気まぐれだけど技術者~
傍観者タイプの要素が強い人は宗教活動の中核にはほとんどいません。
積極的に活動に参加するときもあれば、呼んでも来ないときもあるからです。
熱心に宗教を信仰しているわけではなく、
- イベントなどが楽しいから
- 都合がいいから
- みんなと交流するのが楽しいから
というように、動機が基本的に自分です。
組織側は傍観者タイプに何かの役割を担当させようとしますが、結構な確率でその場をかき回します。
そもそも動機が自分なので責任などには向きません。
ただ、傍観者タイプにはなぜか特殊な技能を持っている人が多いです。
- システムエンジニア
- ギター・ベース・ドラムなどの楽器
- 建築技術
- イラスト制作
- 絵画
- 写真
- 彫刻、etc...
経験則なので100%ではありませんが、傍観者タイプと話していると「え?そんなことできるの?」と驚かされることが少なくありません。
本質~人付き合いに不器用?~
なぜそのような人が宗教をやるのかは定かではありません。
ただ個人的な考えでは人付き合いに不器用な人が多いので、誰でも受け入れてくれる宗教というコミュニティは人とつながる場所としてとらえているのではないかと思っています。
人より不器用なこともあり彼らの過去を見てみると、
- 学校でいじめにあった
- 両親から頻繁に不器用さを指摘されてきた
- 専門分野以外の仕事で失敗を重ね冷遇された
- 一人っ子だった
という人が多いように思います。
傍観者タイプにとって教団は「こんな自分でも受け入れてくれる居場所」とでもいうべきでしょうか。
賢い宗教指導者は彼らの信仰云々よりも技術力をうまく活用します。
また人付き合いに不器用な分、行動や言動が面白いことが多いので、よく茶化されつつ可愛がられます。
それがまた傍観者タイプがその宗教に留まる理由になるんです。
他のタイプとの関係
傍観者タイプにとって信仰重視タイプはよく面倒を見てくれる存在です。
実力重視タイプも気軽に話しかけてくれて、割合良好な関係を持てます。
リーダータイプは相手の立場が自分より上か下かで関係が変わってきます。
信仰重視タイプとの関係
基本的に傍観者タイプと頻繁に交流するのは信仰重視タイプです。
宗教活動に積極的な信仰重視タイプは傍観者タイプを、
- 教育するべき対象
- 面倒をみるべき存在
- 引き留める必要がある人
と見ていることもあり、集会にいくと優しく接してきます。
そのため信仰重視タイプとの関係は比較的良好で、イベントやセミナーに参加するよう呼び掛けてくるのもの信仰重視タイプです。
しかし関係が深まってくるにつれて、信仰重視タイプの行動や態度は
- 信仰心を追及する
- 考え方をコントロールしようとする
ものに変化しいき、徐々に息苦しさを感じてくることもあります。
実力重視タイプとの関係
実力重視タイプと傍観者タイプが接点を持つことはあまり多くありません。
それは仲が悪いというわけではなく、
- 実力重視タイプはあまり宗教活動に参加しない
- 傍観者タイプも楽しくないと宗教活動に参加しない
というように動機は違っても「宗教活動に参加しない」という共通点から面識を持つ機会が少ないというだけです。
しかし宗教が主催するスポーツイベントなどで対面したときは比較的仲良く接することがあります。
傍観者タイプは信仰重視タイプと違って、信仰の在り方を説いたりすることはあまりありません。
そこが実力重視タイプの警戒を解く結果につながります。
ここに信仰重視タイプが介入してきて、実力重視タイプを教団に引き戻すよう耳打ちすることも少なくありません。
こうなると話がややこしくなり関係が悪くなることもあります。
リーダータイプとの関係
リーダータイプはよく傍観者タイプを気にかけてくれます。
人として魅力があるので、傍観者タイプとしても気にかけてもらうことに対しては抵抗はありません。
可愛がってくれるリーダータイプもいます。
しかし、リーダータイプは役割や責任を持つよう迫ることが多く、そういう意味では抵抗を感じます。
その結果、自分の「居場所」としていづらく感じることも少なくありません。
リーダータイプのいうことはよく聞きますが、それは素直だからではありません。
何か失敗するとリーダータイプは激しく責任を追及してくるからです。
人間誰でも責任を追及されるのは嫌なもの。
傍観者タイプは特にそれを怖がる傾向があります。
人として魅力的なリーダータイプに否定されると自分の存在まで否定されたような感覚になるんです。
ただしリーダータイプの立場(年齢や役職など)が自分より下のときは話が変わります。
リーダータイプは目上の人に礼儀正しく、人懐っこいこともあり仲良く良好な関係を築きやすくなります。
教団との関係
傍観者タイプへの教団・宗教組織との関係は、その教団が傍観者タイプの何を評価するかで変わってきます。
傍観者タイプには卓越したスキルがありますが、積極的に信仰するわけではありません。
そこで傍観者タイプの
- 技術力
- 信仰心
どちらに重きを置くかで対応が変わります。
技術力~組織の外郭を固める貴重な存在~
教団が傍観者タイプの技術力に着目した場合、組織を支える人材として彼らを重宝します。
総務をはじめ
- インターネット分野
- 芸術分野(音楽、絵画、写真)
- 芸能分野(タレント・テレビ出演)
など、傍観者タイプの特技を活かして役割を与えていきます。
すると
- 傍観者タイプからすれば「得意なことをやらせてくれる」
- 教団・宗教組織からすれば「教団の発展に貢献してくれる」
という利害が一致。
大きな新興宗教であればあるほど、傍観者タイプを上手に活用します。
信仰心~教育するべき対象~
宗教の教義に厳格なルールがある場合、教団はそのルールをものさしに傍観者タイプを測ります。
そして大抵がそのルールの基準から何かが欠如していて、例えば
- 自分勝手、奔放
- 教義の解釈がズレている
- 宗教活動に積極的に参加してこない
- お布施(献金)の額が少ないもしくはお布施しない
など、教団としては面白くない行動や態度を取る人が多いです。
ルールに沿わない傍観者タイプは教育の対象になるため、セミナーや集会に参加するように仕向けます。
上手く教育できれば信仰重視タイプになることはありますが、本質は自由を求めることもあり、何か責任を持たせると現場をかき回して混乱させることがしばしば。
得意分野以外のことを任せるのだから当然と言えば当然ですね。
傍観者タイプの問題点
最後に傍観者タイプの問題点について触れます。
傍観者タイプは自分以外の人に頼りっぱなし。本来持っている技術をうまく活用すれば、自分の力で道を切り開けるのに、それをしようとしません。
流されるまま、相手の言うがままにしていることで味気のない人生を送っています。
自分の人生に対してはっきりしない
傍観者タイプの人は自分の人生に対してどうするのかがはっきりしません。
自分の人生にたいして曖昧だと、そこをうまく利用されて相手の言うがままになってしまいます。
わたしがいた宗教団体にはそんな人がたくさんいました。
情熱があるから教団にいるわけではなく、ただ言われるがままに生きてきた結果です。
信仰重視タイプはまがいなりにも宗教活動に積極的で充実した生活を送っています。
実力重視タイプは自分の気持ちに正直です。
しかし傍観者タイプはせっかくの技術や才能を活かすことなく、人生をムダにしています。非常にもったいない生き方ですね。
自分の能力や才能に気づかないことも
さらに厄介なことがあります。
宗教団体によっては傍観者タイプの卓越した能力や才能を制限することがあるんです。
これは悪質なやり方で、
- その人の特技に低い評価をくだす
- 密かに自信を持っていたものを否定されて落ち込む
- 自分の存在に自信をなくす
- 落ち込んだところに宗教の教義を吹き込まれる
という流れで徐々に宗教なしには生きていけないように錯覚・依存させます。
宗教団体側も意図してやっているわけではありません(やっているところもあるだろうけど)。
しかし残念ながら宗教という形態をとっている限り、そうなりやすいんです。
教団側としては宗教活動を優先してもらいたい欲求が強いですからね。
仲良くしていた子の話
わたしが仲良くしていた子は
「将来、歌手になりたい!」
「スポーツ選手になりたい!」
と夢にあふれていました。
しかし教団に身を置いていると「それは後回しにして宗教の教義を身につけてから力を入れれば良い」という雰囲気になります。
本当はやりたいことがたくさんあるはずなのに、親や周囲の人から教会活動を優先するように言われるわけです。
実力重視タイプならこれに反発できますが、傍観者タイプは自分以外の人の言われるがままになることのほうが多くなります。
久しぶりに彼とスタバで話していると
「俺、もうこのままでいいや」
と言うようになっていました。胸がしめつけられる思いがしました。
彼が将来の夢について語っている時に、表向きには応援するように言っていた人たちが、彼がいなくなると影でその夢を笑っていたのを見たことがあります。
そしてその中にわたしもいたのです。
傍観者タイプの最優先事項「自立」
傍観者タイプの人がとにかく取り組むべき課題は「自立」です。
現状誰かから優しくされたり評価されたりすることを生活の糧にしています。
そのため宗教の中にあるコミュニティに依存する結果につながっている、このことに気づくだけでも大きな一歩を踏み出すことになるでしょう。
親や兄弟、他の信者の意見に一喜一憂することなく、
- 自分で考えて
- 自分で決めて
- 自分の意志で行動する
というように、自分の人生のコントロールを取り戻す必要があります。
活路は持ち前の卓越した技術。
気づいたらずっとやってしまうことがあるはずです。
そこに能力のヒントが隠されています。
傍観者タイプを笑う人たちは、実をいうと自分ではなにもできない人がほとんど。
彼らは傍観者タイプが自分より下の人間だと見下していて、傍観者タイプはそれを受け入れてしまっています。
彼らがすごいのはその宗教・教義の中だけ、
- 人生のコントロールを取り戻し
- 自分の能力や技術を開花させて
- 健全な自立を果たす
これができればそれほど大した人ではなかったと気づくときが必ずきます。
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